FUN+WALK PROJECT

FUN+WALK PROJECT

FUN+WALKコラム歩く楽しさを伝えるコラム、続々更新中

2018.04.26

川にフタしてできた道「暗渠」がたくさん!? おしゃれな渋谷の”もう一つの顔”をみながら歩いてみた【暗渠:渋谷川編①】

川にフタしてできた道「暗渠」がたくさん!? おしゃれな渋谷の”もう一つの顔”をみながら歩いてみた【暗渠:渋谷川編①】

「暗渠」。この漢字の読み方分かりますか?

「あんきょ」と読みます。特に「渠」という漢字は難しいですよね。人工の水路、みぞという意味で、暗渠は、もともと川や水路だったところにフタをしたもので、今は道路として使われていたりします。

きっと見慣れないかと思いますので、そんな人のためにまずお見せしてしまいましょう。これが暗渠です。

東京にもその他の都市にも、暗渠がたくさんあります。華やかな表通りとは違って、生活用の裏路地だったり、ふだん歩いたことのないようなひっそりとした道が多い暗渠ですが、いろんなパターンがありまして、個人的に好きなのは、上の写真のように、細くて薄暗くて、ジメジメしているような道なんです。この先どうなってるんだろう?というわくわく感がいいんですよね。

そこで今回は、暗渠を歩いてみようと思います。

申し遅れました。私は三土たつお(みつちたつお)。プログラマー・ライターであり、都市鑑賞者。『@nifty:デイリーポータルZ』にて、街歩きの記事などを多く書いています。

編著『街角図鑑』(実業之日本社)、共著『東京「暗渠」散歩』、『凹凸を楽しむ東京スリバチ地形散歩』(ともに洋泉社)等があります。東京を自転車で走るうち、その地形に興味を持ち、川のない谷としての暗渠に目覚めました。そんな私が、今回から暗渠の魅力をご紹介していきます。

まず最初の場所は渋谷です。

渋谷には、昔から渋谷川という川が流れていました。いまでは渋谷駅より北が暗渠となっています。ブラタモリなどの影響で渋谷川のことを耳にしたことがある方もいるかもしれませんね。でも、実際に渋谷川の暗渠を”意識して”歩いたことはない、という方が多いんじゃないでしょうか。

実は、私が一番最初に歩いた暗渠が渋谷川でした。そのときの道のりを辿りながら、暗渠散歩の楽しみ方をお伝えします。

キーワードは、くぼみと橋の親柱

八幡橋から渋谷川を北(上流)に向かって見る

八幡橋から渋谷川を北(上流)に向かって見る

出発点は、渋谷駅のちょっと南。八幡橋という橋の上からです。

この川が渋谷川です。水面が見えているふつうの川のことを開渠(かいきょ)といいます。渋谷川は、渋谷駅から南は開渠になっています。

八幡橋から渋谷駅に向かって歩いていくと、「いなりばし」と書かれた橋があります。ここから先は、川は地面の下にもぐり、暗渠になっています。

稲荷橋から先が暗渠になっている

稲荷橋から先が暗渠になっている

ここに来ると思い出すのが、忠犬ハチ公のことです。実はハチ公が亡くなっているのが見つかったのは、ここ稲荷橋だったんです。昭和10年ごろというから、暗渠になる前ですね。渋谷駅周辺の渋谷川が暗渠化されたのは、昭和38年ごろのことです。

その稲荷橋から先、駅前再開発が進む渋谷駅前になると渋谷川は見えなくなってしまいます。どうやって暗渠を辿ればいいのでしょうか。初めて渋谷川の暗渠を辿ろうとしたとき、実は、無茶なことをしました。それがこの写真です。

稲荷橋近くの地面に聴診器を当てる筆者

稲荷橋近くの地面に聴診器を当てる筆者

地面の下にまだ川が流れてるなら、川の音が聞こえるはず。ならば聴診器で聞こう!ということを試したんです。当然、無理でした(笑)。なんの音も聞こえません……。そういうところから一つ一つ学んでいったんですね。

暗渠を辿る方法の一つは、聴診器ではなく、古地図に当たることです。明治ごろから昭和初期の地図を見れば、当時の川筋がちゃんと書かれています。

でも、いつでも古地図を持ち歩いてるわけじゃなく、そんなときでも有効なのが、高低差に敏感になることなんです。

JR渋谷駅の山手線ガードの下がくぼんでいる

JR渋谷駅の山手線ガードの下がくぼんでいる

さきほどの稲荷橋から北へ進み、渋谷駅東口を通って宮益坂下まで来て、山手線の高架下のほうを見ると、地面がくぼんでいる、つまり、谷になっているのが分かります。(写真の奥がハチ公前のスクランブル交差点です)

谷を作ったのは川に決まってます。だから、一番くぼんでいるところが昔の川筋だ!といいたいところなんですが、ここに限ってはちょっとひっかけがあります。

一番くぼんでいるのはガード下なんですが、これは自動車をくぐらせるために人間がさらに掘ったんでしょう。正解は、そのちょっと手前です。そこが渋谷川の川筋になります。

奥へとつづく自転車駐輪場が見える

奥へとつづく自転車駐輪場が見える

その証拠に、ガードの手前で右(北)を見ると、自転車やバイクの駐輪場が続いています。いかにも川跡っぽいじゃないですか。

そうなんです。渋谷川は、この駐輪場のあった場所を流れていました。いまでは下水道幹線として地面の下を流れていて、奥に見える2階建ての店舗群は、のんべい横丁です。川面は消えて駐輪場になりましたが、のんべい横丁は渋谷川に沿って建てられていたんですね。AR(拡張現実)で当時の面影を再現したくなります。

渋谷川はキャットストリートの下を流れる

渋谷川はキャットストリートの下を流れる

駐輪場を抜けて歩いていくと、やがて明治通りに出ます。渋谷川は明治通りをまたいで、その先の通称キャットストリート(渋谷と原宿をつなぐ道)へと続いています。キャットストリートがもともと渋谷川だったというのは、聞いたことがあるかもしれません。

キャットストリートの入口に、実はこんなものがあります。

「みやしたばし」と書かれた碑

「みやしたばし」と書かれた碑

コンクリートの塊に「みやしたばし」と書かれています。もともとここにあった宮下橋という橋の親柱です。親柱というのは、橋の両側にあって橋の名前が書いてある柱のことですね。

以前はもっとくすんだ、年季を感じさせる色をしていましたが、最近塗り替えられたようです。たぶんお役所としては綺麗にしたかったんだと思いますが、個人的には当時からの年月を偲ばせる風合いのままでも良さがありました。

キャットストリートを表参道に向かって進んでいきます。渋谷川はじつはキャットストリートのずっと奥の方から流れてきていましたので、私はいま、渋谷川を遡っているということになります。

道が妙に盛り上がっている

道が妙に盛り上がっている

進んでいくと道が急に盛り上がっている交差点に出くわします。ふだんなら別に気にしませんが、ここが川だったと思うと、その謎が分かります。

これは橋の跡なんです。橋は川の両側の地面より盛り上がっていますよね。だから、こういうふうに跡として残るというわけなんです。

店先に米袋が積まれている小池精米店

店先に米袋が積まれている小池精米店

さらに先へ歩くと、お米屋さんがありました。看板には「穏田の水車 小池精米店」と書かれています。

このあたりには、渋谷川の水流を利用した水車がいくつかありました。今では全然残っていませんが、このお店ではそれらの一つ「穏田の水車」を、お米のブランドとして名づけているんだそうです。

渋谷川を辿りながらこのお店を見つけたときは嬉しかったですね。川と、そこに回っていた水車の風景が、ここにまだ残っているような気持ちになりました。あー、ここもAR(拡張現実)で当時の面影を再現したくなりますね。

右側にもともとの流れ、旧流路が見えている

右側にもともとの流れ、旧流路が見えている

キャットストリートを進み、もうすぐ表参道というところで、こんな脇道が現れます。左側が本流。右が脇道です。さて、この脇道いったい何だと思いますか?

暗渠に脇道が現れたときには、いくつかのパターンがあります。支流となる川との合流点だったり、並行に流れていた傍流だったりします。

ここに見えている脇道は、実はもともとの渋谷川の流れだったんです。よく見ると、左側の道が川にしては真っ直ぐすぎませんか。川はなかなかこんなにまっすぐに流れません。右側の脇道ようにくねくねと曲がっていたのを、工事によって左側のまっすぐに変えたんです。こういうことはよくあって、改修といいます。

さらに先に進むと表参道に突き当たりました。地下鉄明治神宮前駅のほうに歩き、キャットストリートを振り返ってみますと……

表参道の地形を改めて見てみる

表参道の地形を改めて見てみる

くぼんでる! 奥の地面がくぼんでますよね。表参道といえばこのゆるやかな坂ですが、これって渋谷川が作った谷の断面を見てたんだなということが改めて分かります。

ー今回は、ここまで。次回は、渋谷川にもどり、表参道を超えてさらに北(上流)に向かいます。

(後編へ)

 

WRITER
三土たつお(みつちたつお)プログラマー・ライター・都市鑑賞者

1976年東京都北区しもふり銀座(谷田川暗渠)そばで生まれる。「@nifty:デイリーポータルZ」にて街歩きの記事などを多く書く。編著「街角図鑑」(実業之日本社)、共著『東京「暗渠」散歩』、「凹凸を楽しむ東京スリバチ地形散歩」(ともに洋泉社)等。東京を自転車で走るうちその地形に興味を持ち、川のない谷としての暗渠に目覚める。