FUN+WALK PROJECT

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あるく研究所「歩く」ことの効果をわかりやすく解説します。

2017.12.06

人生100年時代に考えたい健康寿命、ヒントは日々の「歩くこと」にあった

人生100年時代に考えたい健康寿命、ヒントは日々の「歩くこと」にあった

人生100年時代の到来。

「これからの時代は平均寿命が伸びていき、100年を生きること前提にすべき」と自著『ワーク・シフト』で語った英ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授。彼女によると、医療や技術の発達にともない、私たちの人生は100年あるものとして計算すべきだとのことです。

実際に全ての人が100歳まで生きるというわけではありませんが、厚労省発表の日本人の平均寿命は、男性が80.98歳で、女性が87.14歳(2016年)。男性は5年連続、女性は4年連続で過去最高の更新となっていることを考えると、あながち遠い話ではないように感じますよね。

さて、そんななか、「健康志向」「健康寿命」というキーワードがよく聞こえてくるようになりました。超高齢社会を迎える日本について、奈良県立医科大学MBT研究所教授・梅田智広さんが語りました。

歩くことは筋肉にも脳にも良い? 

初めまして、梅田智広です。まずは皆さんに問題です。健康長寿に向け大事なことは何でしょう?

こちら、正解は運動と栄養です。特に運動、筋力強化は欠かせません。

体力は年齢とともに衰えます。誰しも歳を重ねれば、体の機能に変化が現れるもの。例えば、身体のバランスや脚・手の力、指の動きの精度が下がったり、骨折しやすくなります。

一方、心や考える力にも衰えは現れます。記憶力・計算力・構成能力が低下したり、思考の柔軟性が失われたり、そして、感情のコントロールも難しくなったりと、色々な変化が現れて、結果的に周囲の人との交流も減る傾向があると言われています。これらは年齢とともに低下し、対策をしないと、その度合いはさらに進んでしまいます。

体や心の機能が低下すると、日常の活動が制限され、好きなことに参加できなくなることにつながり、心身機能のさらなる低下を招きます。このような悪循環を繰り返さないためにも、毎日の運動はとても大切です。

しかし、運動する時間なんてないという働き盛りの方も多いのも確か。そこでオススメの運動が、日常生活で誰でも手軽に取り組める「歩くこと」です。歩くことは、老化の1つである筋肉の衰えを防いだり、関節の動く範囲を維持したりすることに効果があると言われています。そのため、筋力トレーンングによる“貯筋活動”が有効なのです(1)。

最も老化現象が進むのは「太ももの前」部分

体の中で最も老化現象が進むのは大腿四頭筋、太ももの前の部分と言われています。日常生活で一番大事なのがこの大腿四頭筋で、毎日歩いたり、階段を昇ったり降りたりするときなどに常に使う筋肉です(2)。

この筋肉は骨とも繋がっていて、筋肉に力が加わると、その力が今度は骨に伝わります。骨は物理的な力により活性化するため、結果的には筋肉を使えば同時に骨密度も上昇することも期待できます。だから、歩くことは、特に女性にとっては骨粗鬆症予防としても、とても効果的なのです。

筋肉は筋繊維の束で、筋繊維1本1本には運動神経がついており、運動神経は背骨を通じて脳に達しています。脳には運動野と呼ばれる運動を司る部位があり、体への命令はそこから背骨を経て筋繊維に届けられます。すなわち、脳⇔運動神経⇔筋肉の回路で刺激が相互に伝達されるのです。だから息がはずむ程度に歩くと、脳に作用し高揚したり、落ち着いたり、快感が得られたりすることが専門的な研究でも確認されています。(3)

このように、強めに歩くことは同時に脳を刺激してくれるので、脳にも神経にも良いのです。また、知人や家族と一緒に歩いたり、周りの景色をみたりすることで効果をさらに高めることができます。肉体疲労等も忘れられるので、ポジティブな気持ちになることも報告されています。

森林コースのウォーキングが効果的

歩く場所は自然の中がオススメです。森林コースのウォーキング効果を調べた研究(4)では、森林コースのウォーキングはストレスを低下させる効果が確認されました。ストレス以外も「緊張・不安」「抑うつ・落ち込み」「疲労」が改善されたり、活力が高まると報告されています。

このように歩くことには体や心に様々な影響を与えます。ただ、その効果は、歩き方や場所、時間によって、大きく異なります。健康効果を高めるためにも、歩くときは、自然の中で美しい景色を楽しみながら、また、自然がないならば、いつもより強めに歩くことを意識してみてください。何よりも継続。まずは、毎日少しでも歩くことを心がけましょう。

(1)福永哲夫、神崎史、貯筋通帳-改訂版、ワニマガジン社、2006
(2)福永哲夫、梅田智広、からだを整える!貯筋®エクササイズ、一般財団法人健康医療産業推進機構、2017
(3)荒井弘和、堤俊彦、一過性のウォーキングに伴う感情の変化とウォーキングに伴う感情を規定する認知的要因、行動医学研究、2007、13、6-13
(4)三井 知代、森林植物園ウォーキングによるストレス軽減効果の検討、心身医学 51、4、345-348、2011

WRITER
梅田智広(うめだ ともひろ)奈良県立医科大学 MBT研究所 教授

1999年東京理科大学大学院卒。同年三菱マテリアル(株)入社。
オリンパス(株)、東邦大学医学大学院、東京理科大学専門職大学院総合科学研究
科(MOT)修了を経て、2006年東京大学工学系大学院特任助教。東京理科大学総合機構客員准教授、慶應義塾大学大学院政策メディア研究科特任助教、東邦大学医療センター大橋病院整形外科学講座客員講師、奈良女子大学社会連携センター特任准教授を経て、2015年4月より奈良県立医科大学産官学連携センター、MBT研究所教授。医学博士、技術経営修士。

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